バイタルサインは、生命兆候(生命:vital、兆候:sign)と訳され、身体の異変を速やかに反映する極めて重要な指標となります。一般的には体温・脈拍・血圧・呼吸のことを指しますが、「意識レベル」やSpO2(血中酸素濃度)、「尿量」を含めることもあります。
今回は、医療や福祉の現場で必ず測定されている「バイタルサイン」について整理してみました。
業務中に複数回測定するバイタルサインですが、慣れてくると、自己流でついつい行いがちです。が、基本を守って測定することが大切です。
正常値(基準値)は上記の通りですが、バイタルサインを測定する際には、基準値の把握以外にも、個人毎の普段のバイタルサインの値を確認し、普段の値と測定時の値に大きな変化はないかを確認することが大切です。
検温する際は、個々人の平熱をキチンと把握しておき、平熱からどの程度、変化しているかという点に注意します。
- 体温計は、45°くらいの角度から脇の中央部(上方向)に向かって差し込みます。
水平に挿入してしまうと、腋窩中央部と体温計の感温部が密着せず、正確な数値が得られないためです。 - 側臥位では上側、麻痺がある場合は健側で測定します。
側臥位の場合は体重によって下側の腕が圧迫されることで循環が悪くなるためで、麻痺がある場合は、麻痺側が健側にくらべて血液循環が変動しやすく、体温の変動も激しいことから、腋窩温であっても正しい値が測定できないためです。
脈拍は血液循環を把握する為の指標となります。1分間の脈拍数を測ると同時に脈拍のリズムが一定であるかを確認します。
- 必ず人差し指、中指、薬指で、橈骨動脈(とうこつどうみゃく)に軽く当てて測定します。
(電子血圧計やパルスオキシメーターでは脈が不規則かどうかはわかりません。) - 不整脈(脈の乱れ)や結滞(脈が飛ぶ状態)のある人は、キチンと1分間測定します。
高血圧は高齢者に多く、脳卒中や心筋梗塞など様々な疾病の要因となりますので注意が必要です。平常時の数値を把握しておき、高血圧の方の血圧が急激に下がっていないか等、変化の幅に注意します。
- 心臓と同じ高さで測定します。
- 同じ時間に同じ体位で測定します。
施設利用者さんの容体が急変した際は、まず「呼吸」を確認します。「呼吸回数」と「呼吸の仕方」を診ることが大切です。「吸って吐く」を1回と数え、胸郭や腹壁の動きを診ながら、1分間測定します。
呼吸数を計測する際は、相手が意識していないうちに計測することが必要な為に、脈拍を測っているときに一緒に計測するなどの工夫が必要です。
日本では、JCS又はGCSのどちらかに基づいて意識レベルを評価することが多く、正常な状態はそれぞれ「JCS=0」、「GCS=15」と表されます。
医療現場では、意識障害と意識レベルを評価し正確に伝えるために、JCS(ジャパン・コーマ・スケール)やGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)を使用します。ここでは、JCSを紹介します。
SpO2とは、血液中にどの程度の酸素が含まれているかを示します。SpO2のSはSaturation(飽和), Pは Pulse(脈), O2は酸素を示しています。血液中の酸素を運ぶヘモグロビンの何%が酸素を運んでいるかを示しています。正常値は96%以上、95%未満は呼吸不全の疑いがあります。が、SpO2値は呼吸の仕方、姿勢、動作などで変化し、体内が低酸素に傾けば呼吸数を多くすることでそれを代償しようとします。つまり同じ95%という数値でも、呼吸数10回/分でのSpO2=95%と、呼吸数20回/分のSpO2=95%では意味が全然違ってきます。SpO2だけ見ていると頻呼吸で代償された低酸素血症を見逃してしまうことになりますので注意が必要です。
尿量は腎臓機能の評価に有効な指標となります。が、尿量の評価は、1日に排泄される尿を正確に管理する必要があるため、膀胱留置カテーテルなどを使用できる病室や介護施設でなければ難しいことです。
バイタルサインは生命の兆候を表す重要な指標です。日頃から個々の正常時の数値を把握しておき、「いつもと違う変化」がないかを確認することが大切です。
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